外壁塗装は、戸建て住宅の修繕工事として最も重要と言える工事です。費用がかかることや、塗料の種類が豊富なことなどから悩む方も多いと思います。
この記事では、外壁塗装のタイミングや、使われる塗料の種類、人気塗料メーカーの特徴、外壁の人気色や色の選び方など、外壁塗装の基礎知識的なことついて解説しています。
外壁の塗装工事を成功させるためには、これらの基本的な情報を知ることがとても大切です。塗装工事を検討中の方はぜひ確認してください。
塗料の種類と耐用年数
外壁の塗装工事では、様々な種類の塗料が使われており、価格や耐用年数など、それぞれ異なる特徴を持っています。
現在、日本で住宅の外壁塗装工事に使われている塗料について、それぞれの特徴と耐用年数を確認してみましょう。
アクリル系塗料
アクリル塗料とは、アクリル系合成樹脂を主成分とする塗料全般のことで、価格の安さと鮮やかな発色性がメリットと言えます。
短期間で塗り替えを行う予定の場所や、ディスプレイ、屋内の壁面塗装等に使われます。透湿性が高く、ひび割れしやすく、雨風に対する耐久性が低いことから、一般的な住宅の外壁塗装には最近は使われなくなってきました。
耐久年数は約4~7年とされています。
ウレタン系塗料
ウレタン系塗料とは、断熱材や緩衝材として使われるウレタンを主成分とする塗料のことで、塗膜が光沢を持ち、耐候性があり、高級感のある仕上がりが特徴です。
住宅の塗装工事に使われる塗料の選択肢として、シリコン系塗料と並んでよく使われる塗料です。耐久年数は約6年とされています。
シリコン系塗料
シリコン系塗料とは、住宅の塗料はじめ、シーリング材、建築用の保護材、クッキングシート、おしゃぶりの先端、カテーテル、ファンデーション、シャンプー等に用いられる シリコンを主成分とする塗料のことです。
耐熱性、耐侯性に優れ、汚れが落ちやすく、高級感のある光沢が特徴です。耐久年数は約13年とされています。
ウレタン系塗料と比較されることの多い塗料ですが、長期的な目で見るとウレタン系塗料よりもコストパフォーマンスに優れ、メンテナンスの手間が減り、耐久性に優れるため、最もポピュラーな選択肢として挙げられます。
フッ素系塗料
フッ素系塗料は航空機の外観塗装にも用いられる塗料で、他の塗料と比較して耐候性、耐熱性、耐寒性に優れた効果があり、コーティング機能があることから汚れも落ちやすくなるため、外壁の美観を長期的に保つ効果が期待できます。
ただし、一般的な住宅の塗装に使うには価格が高いため、認知度も需要も低いのが現状です。耐久年数は約18年とされています。
遮熱塗料
遮熱塗料は、住宅の内部に熱が進入することを防ぐ機能がある塗料のことで、住まいの環境を改善し特に夏場の冷房の効率化にも繋がるため、近年注目されています。
遮熱に加えて、音を跳ね返す効果が期待できることや、耐久性が優れ、外壁塗装の手間が減ること、冷暖房費の削減が見込めることから、コストパフォーマンスも優れていると言える塗料です。
ただし、表面に汚れが蓄積すると遮熱効果が弱くなるため、定期的に外壁の表面を洗浄することや、防塵機能のある遮熱塗料を選択することがおすすめです。耐久年数は約15年とされています。
光触媒塗料
光触媒とは、太陽の光で外壁に付着した汚れを分解し、落ちやすい状態にし、雨や水の力で汚れを洗い流す機能のある塗料のことです。汚れが付着しにくいことから、新築の際に美観を保つために取り入れられることも多くなりました。
カビやコケが発生しにくいことや、耐用年数が長く塗り替えの手間が省けること、空気を浄化する効果があること、臭いを分解すること、遮熱効果が期待できることから、現在存在する外壁塗装に使われる塗料の中で、最も優れ、高級な選択肢と位置づけられています。耐用年数は約20年とされています。
弾性塗料
弾性塗料とは、塗料が持つ機能性の中で外壁のひび割れを防ぐ効果があり、弾力性のある塗料のことを言い、上記で紹介したトップに使われる塗料の下塗りとして使われます。
塗膜に厚みがあり、よく伸びることで下地の割れをカバーし、表面にひび割れを見せません。住宅の外壁塗装に使われるのは、弾性塗料の中でも微弾性塗料と呼ばれるものになります。
弾性塗料は、サイディングやモルタル壁等との相性もありますので、業者の意見を聞きながら選択することが大切です。
セラミック塗料
塗料の一部にセラミックの成分を混ぜてある塗料のことです。セラミックの特性が活かされ、耐熱性が高く、紫外線に強く、硬度が高く、親水性があることから汚れにくく、高い耐久性が期待できます。
シリコン系塗料等の一般的な塗料にセラミック成分を混ぜて高い機能性を持たせたものや、天然石調や砂岩調などの外壁の意匠を演出するための骨材としてセラミックを使っているもの等、異なる種類の塗料ではありますが、セラミックの成分が混ざっていることから、どちらもこの様に呼ばれています。
さび止め塗料
さび止め塗料とは、鉄部などのさびが発生しやすい部分に使われる塗料です。さびの発生を食い止めるために、酸素や水分から遮断し、鉄面をアルカリ性にし、電気抵抗の大きい皮膜を形成することで腐食電流の発生を防止します。
塗装工事の際にさび止めを施す箇所には、大体さびが発生していますので、一般的にはさびを落とすためのケレン作業を行った上でさび止めの塗装が施され、その上に仕上げ塗りがされます。
塗料の違い
住宅の塗装で使われる塗料には様々な種類がありますが、使用部位や特性から更に細かく枝分かれします。
「水性塗料」と「油性塗料」の違い、「つや消し」と「つやあり」の違いについて確認してみましょう。
水性塗料と油性塗料の違い
外壁塗装に使われる塗料には、水系の水性塗料と溶剤系の油性塗料があります。2つの違いは明確で、「水性塗料」の特徴は以下のようになります。
- 塗料の主成分は水
- 内装への使用ができる
- 値段が安い
- 臭いが少ない
- 耐侯性は比較的低い
- 気温が低いと施工できない
- 混ぜずにそのまま使える(1液性)
対して、「油性塗料」の特徴は以下のようになります。
- 塗料の主成分はシンナー等の有機溶剤
- 内装への使用はできない
- 比較的値段が高い
- 臭いがきつい
- 耐久性に優れる
- 雨水に強い
- 値段が高い
- 気温を選ばない
- 主剤と硬化剤を混ぜて使う(2液性)
業者は適材適所で塗料の選択をしますので、信頼できる業者に判断を委ねるのもいいかもしれません。気になる塗料があったら業者に相談してみましょう。
つや消しとつや有りの違い
外壁の塗装に使われる塗料のつや程度には、つや消し、つや有りのみで判断されることがほとんどですが、つや消し、3分つや、5分つや、7分つや、つや有りの5つのタイプがあります。
つや有り塗料は、その名の通りツヤツヤした光沢のある仕上がりになります。つやが持続するのは3年程度とされており、塗りたての頃は光沢が楽しめますが、少しずつつやの無い落ち着いた雰囲気に変化して行きます。汚れがつきにくく、カビやコケが生えにくいことから、つや消しと比較すると耐久性に勝ります。
つや消し塗料は、つやが無いマットなしあがりになるため、外壁を主張し過ぎず、塗り替えた感はあまり出ませんが、完成直後から落ち着いた雰囲気になります。左官仕上げのパターンや、木目調等のテクスチャーのある外壁によく似合います。
汚れがつきにくいタイプのつや消し塗料も存在しますが、つや有りに比較すると汚れやすく、その分耐久性が劣るのが現状です。現況の外壁の雰囲気によって、つや有り・つや消しのどちらが似合うかを検討した上で選択しましょう。
外壁塗装を検討するタイミング
外壁塗装を検討する時期は、新築から10年が目安です。使用する塗料の耐用年数により期間は異なりますが、基本的には10年目に外壁塗装を行い、20年、30年と10年おきに外壁のメンテナンスを検討することが理想的です。
外壁の塗装工事は、家を健全に長持ちさせ、外観の美しさを保ち、家自体の資産価値を高めために欠かせません。住まいの外壁は、常に紫外線や雨風にさらされ、非常に過酷な環境におかれています。
目立った劣化が無くても、新築から10年経つと傷みが生じるものです。プロの目で外部の点検を行い、必要に応じて外壁の塗装を検討することで、家のダメージを早期に発見することができ、家族の安全な暮らしを守ることに繋がります。
可能であれば、月に一度は家の外観に異常が無いか点検し、気になる部分を見つけたら、直ぐに専門家に相談することが理想です。10年経っていなくても、以下の項目に当てはまる場合は、外壁塗装等のメンテナンスを検討する必要があります。
- 塗膜がはがれている
- 色あせてきた
- 塗膜がふくれている(はらんでいる)
- ひび割れがある
- 欠けた部分がある
- 簡単に落ちない汚れが付着している
- カビが生えている
- コケが生えている
- 錆びている
- 焦げている
- 触ると手が白くなる
- 住宅内部に浸水する
健全に住まいを長持ちさせるためにも、適した時期に外壁の塗装を行いましょう。
人気塗料メーカーの特徴
外壁塗装に使われる塗料は、たくさんの企業が販売していますが、やはり大手企業の塗料が品質面・価格面でも安心して利用できます。ここでは、国内シェア9割を占める塗料メーカー3社の特徴について解説します。
エスケー化研
エスケー化研株式会社は、昭和33年に設立された歴史ある企業です。建築仕上塗材の製造・販売や、耐火断熱材や塗料の製造・販売などを主に行っています。
エスケー化研は、日本ペイント、関西ペイントと並んで日本の3大塗料メーカーであり、国内シェアにおいてはナンバーワンです。近年はセラミック系塗料に力を入れています。
シリコン系塗料としてポピュラーな水性セラミシリコンや、1液性ながら、2液性と同等のスペックを持った水性クリーンタイトSi、高い耐久性を持ったアクリル系塗料の水性セラタイトSi、フッ素系塗料のクリーンマイルドフッソ、屋根塗装でポピュラーなヤネフレッシュF等優れた商品が人気です。
関西ペイント
関西ペイント株式会社は、1918年に設立された歴史の長い会社です。建築用、自動車用、工業用塗料の製造・販売、配色設計の他にも、バイオ関連製品や電子材料関連製品の製造・販売も手がけています。
関西ペイントは、日本ペイントとエスケー化研と並んで日本の3大塗料メーカーです。遮熱塗料や、機能性漆喰塗料が注目を集めています。
内外装に使用可能な弱溶剤シリコン系塗料のセラMシリコンや、フッ素系塗料のセラMフッソ、弾性追従性に優れたアレスアクアセラシリコンとアレスアクアセラフッソ等の施主と施工者のニーズに寄り添った商品展開が人気を集めています。
日本ペイント(ニッペ)
日本ペイント株式会社は、1881年創業の塗料メーカーの老舗企業で、自動車用、建築用、構造物用、船舶用、金属素材用、電気機器用、産業用の塗料の製造・販売、電子部品材料・化学工業製品の製造・販売等の事業を行っています。
国内3大塗料メーカーのひとつであり、世界第4位の塗料メーカーとしても展開し、国内で最も有名な企業ではないでしょうか。
遮熱塗料として有名なサーモアイシリーズや、バラの香りがするセラミックシリコン系塗料ハナコレクション100水性、住宅の外壁塗装でポピュラーなシリコンセラシリーズ等独自の技術力を集約したオリジナリティーの高い商品展開が人気です。
外壁塗装で人気の色
外壁塗装で最も人気がある色は白色です。真っ白と言うよりも、アイボリーなどの黄色系や、グレー等、色相で白に近い色を選ばれることが多いです。目立ちすぎず、外観を明るく生まれ変わらせたいという要望に寄り添った選択肢です。
また、近年は新築時の外壁を活かすために、高価ではありますが、クリアーなコーティング系塗料も人気を集めています。
色つきの塗料で塗装を行うと、どうしても現況の外壁の色味は隠れてしまいます。サイディングの意匠性が向上しているため、気に入った外観のまま住み続けたいという要望から、この様な傾向も見られています。
この他にも、2色を組み合わせて塗り分けるツートンの配色や、パステル系の色、暖色系の色が比較的多く選ばれる傾向にありますが、一番要望として多いのは「今と変わらない色で、新しく見えるように明るめにしたい」ということです。
新築時から見慣れていて、思い入れのある配色を変える勇気はなかなか出るものではありませんし、変える必要性を感じる方も多くはないようです。
現況と違った配色を検討する際は、まず業者に何パターンか提案してもらうことをおすすめします。
選択した色で塗装の完成イメージを作成するサービスや、画面上に表示される3Dの自宅模型を着せ替えのようにコーディネートできるサービス等、完成をイメージしやすいサービスを行っている業者も増えていますので、積極的に活用して失敗のない色選びをして下さい。
自然の景観を維持しなければいけない「風致地区」等の地域にある家は、外壁の色に制約があるので、外壁塗装を検討する場合は自治体に確認してから工事を行いましょう。
まとめ
今回は、外壁塗装の塗料の種類と耐用年数や特徴、色選びについて解説しました。外壁塗装は金額がかかり、近隣にも影響を及ぼす工事です。
塗料の種類もたくさんあり、同じような特徴を持つ塗料でも色合いや耐用年数が違います。まずは耐用年数でメンテナンスについて考え、展示会や業者のサービスなどを利用して各社の塗料を比較し、理想の塗料を見つけて下さい。
信頼できる塗装業者を選ぶことも肝心ですので、必ず数社に相見積もりをとり、慎重に業者選びをしましょう。