原状回復の必要がない借主負担DIY型の賃貸契約について

原状回復の必要がない借主負担DIY型の賃貸契約について

賃貸契約を交わしている物件を退出するときは原状回復をするのが大原則ですが、近年DIY人気が高まり続けている影響で、賃貸でもDIYをOKとしている物件が増えており、しかも原状回復の必要がない借主負担のDIY型の物件も増加しています。

ここでは原状回復の必要がない物件の賃貸契約や、リフォームする際の注意点などについて解説していますので、DIY型の賃貸物件を検討している方は参考にしてみてください。

借主負担DIY型の賃貸契約とは

通常の賃貸契約では部屋を退居するとき、借りたときの状態に戻す義務があります。経年劣化による壁紙の色あせや汚れ、床の傷や設備の傷みなどはこれには含まれませんが、釘やビスを壁に打ち込んだり、壁紙を勝手に張り替えるなどの行為は禁止されています。

借主負担DIY型賃貸契約とは2014年に国土交通省が発表したもので、ガイドラインではこれまでの原状回復が義務つけられていた賃貸契約に対し、借主の負担で修繕やリフォームを許可するという新しい形の賃貸借契約です。UR都市機構などでも一部の部屋では、DIY型の物件があり人気が高まっています。

貸主は入退去時の修繕義務は負わず、あくまでも借主が自己負担でリフォームやリノベーションを行うというものです。借主負担にすることで貸主は費用負担を抑えることができ、また借主は通常よりも安い価格で賃貸契約をすることができるうえ、自由に部屋のDIYや模様替えをし自分好みにカスタマイズすることができるのです。

壁紙を張り替えたり、ペンキを塗ったりする程度のDIYから業者に依頼して設備の交換や本格的なリフォームを行うなど、借主負担DIY型の賃貸契約は貸主によってできることが様々です。

貸主は退去時にハウスクリーニングや入居中の修繕・補修を行う必要がなく、貸主にとっては費用負担も減り物件の維持管理もしやすくなります。

借主負担DIY型の賃貸契約を行う場合は通常の賃貸借契約書の他に、DIY工事の申請書、DIY工事の承諾書、DIY工事の詳細な取り決めに関する合意書などの書類が適宜必要になります。入居してからや退去時にトラブルにならないよう、事前にきっちり取り決めをしておくことが円満に行くポイントです。

原状回復義務について

一般的な賃貸借契約では借主に原状回復義務が伴うものです。賃貸借契約時に敷金を払っていますので、原状回復にかかる費用は敷金から清算されることがほとんどです。故意による破損や損害も原状回復に含まれるでしょう。では原状回復義務というのはどこまでのことを言うのでしょうか。

貸主負担の事例

家具の設置のための床のへこみやカーペットの置き跡、日差しによる床や壁紙の色あせ、経年劣化による設備の傷み、画鋲やピン程度の小さな刺し跡などは原状回復義務には含まれず、貸主負担で補修を行う事項です。

またサッシまわりからの雨漏れや、建具の歪み、網戸の劣化など構造に絡むようなことに関しても貸主負担となります。

借主負担の事例

手入れを怠った場合の傷や傷み、例えば飲み物をこぼした跡の染みや結露を放置した際のカビや壁紙の剥がれ、喫煙によるヤニ汚れや落書きなどは原状回復義務に含まれますので、借主が費用負担をしなければなりません。

また重量のあるものを壁にかけるために開けたビス穴や釘のあとは、下地材の張り替えに影響がでますので借主負担となります。ペットによるニオイや傷も基本的には原状回復義務に含まれますので注意が必要です。

原状回復義務は賃貸契約の年数が長ければ長いほど、割引になる場合もあります。長年住んでいれば様々な箇所が傷んできます。普通に生活をしていても壁紙の色あせや剥がれは経年劣化を伴うものです。入居年数が長い場合は費用を免除される場合もありますので、退居時に相談をしてみるものいいかもしれません。

リフォームする際の注意点

借主負担DIY型といっても何を行ってもいいわけではありません。基本的にはリフォームやDIYをする際、どのような内容の工事を行うのか貸主の承諾を得るようにしましょう。

照明器具の交換程度なら貸主の承諾は必要ありませんが、電気の配線を増設することは注意が必要です。もちろん電気工事技師の有資格者でなければ工事はできません。そして、分電盤にも容量がありますので、増設しても大丈夫なのか、そもそも電気工事のリフォームを行ってもいいのかどうか貸主に確認しましょう。

例えばガスコンロをIHクッキングヒーターにリフォームしたい場合、IHクッキングヒーターを設置するためには200Vのコンセントが必要になります。分電盤の容量に余裕があれば変圧は可能ですが、余裕がない場合はIH用に分電盤を増設しなければなりません。

集合住宅では許可が下りない可能性が高いですが、一戸建ての賃貸物件でしたら貸主によっては許可をしてくれる場合もあるでしょう。借主負担DIY型の賃貸契約で場合によっては熱源を変えることも可能なのです。

また、部屋を広くしたいために柱を切ったり、壁をむやみに壊したりするような構造躯体を触るリフォームはしてはいけません。あくまでも仕上げ材をDIYしたり、仕切りを作ったりするような構造にかかわらない部分のDIYのみ行うことができるのが、借主負担DIY型の賃貸契約です。

上記のような工事はDIYでは難しく業者に依頼をしなければなりませんが、DIYでもできることはたくさんあります。自分で出来る範囲のDIYでも部屋をカスタマイズすることは可能です。

壁紙を張り替える

DIYで部屋の雰囲気を変えるには壁紙を張り替えるのが一番おすすめです。
最近では張ってはがせる壁紙もありますし、インターネットではさまざまな壁紙の材料が販売されています。糊や接着剤なども扱いやすいものがありますので、手軽にできるのではないでしょうか。

ペンキや漆喰を塗る

柱や壁、建具などにペンキを塗ることで全く違う雰囲気に仕上げることができます。また難しいと思いがちな漆喰壁も練った状態で塗るだけの漆喰が市販されていますので、そのような材料をうまく活用するのもいいかもしれません。

床を張り替える

床材を新しいものに張り替えるのは既存の床を撤去したり、下地の処理をしなければならないので大変かもしれませんが、重ね張りをすれば簡単に床材を変えることができます。

従来のフローリング材は厚みがあり重ね張りをすると、敷居との段差で不具合ができてしまうかもしれませんが、厚みのないリフォーム用のフローリング材を使えば段差も気にせず重ね張りをすることができます。

またクッションフロアという床材の場合、糊で接着しているだけですので、のこぎりやインパクトなどの大げさな工具を使うことなく施工ができるのでDIYに向いています。

このようにDIYでできるリフォームはたくさんあり原状回復の必要がないDIY型の賃貸物件では住みながら少しずつDIYを施し、自分好みの部屋に仕上げていく楽しみがありますのでとても魅力的だと言えるでしょう。

賃貸物件に住みながら自由に部屋をリフォームできる借主負担DIY型の賃貸契約は、家賃も安くDIYが好きな人にとってもはとても魅力的な制度です。
賃貸契約の際にはどの程度のリフォームやDIYが可能なのかをよく調べ、退去時のことも考えながらよく検討するようにしましょう。