木造住宅は、新築・中古にかかわらずいつでもシロアリの食害を受ける可能性があります。もし住宅内もしくは敷地内でシロアリを見つけたら、すぐにシロアリ駆除を行わないと被害が拡大してしまうかもしれません。
シロアリの駆除剤等はホームセンターでも販売されていますが、素人判断で駆除しても失敗することが多く、数年後には取り返しのつかないことになってしまうこともあります。
本記事では、シロアリの駆除を業者に依頼する必要性とその費用の相場、さらに優良なシロアリ駆除業者の選び方についてご紹介します。
- 【目次】シロアリ駆除の必要性と費用相場、業者の選び方
住宅のシロアリ被害について
まずは日本国内に生息するシロアリの生態や特徴、住宅内でもシロアリが好む場所など、知っているようで知らないシロアリとその被害のことについてみていきましょう。
シロアリとは
シロアリとは、木材を好んで食べる昆虫のことを言います。アリという名称ですが、実はゴキブリの仲間です。
シロアリと聞くと「害虫」のイメージを持ってしまいますが、自然界では倒木を食べることで森の環境を守る大切な虫です。
しかし、森が減り代わりに建物が増えてしまった現代では、シロアリは住処を求めて木造住宅に入り込み、住宅にとって大切な柱を食い荒らしていきます。
シロアリは白くない!
シロアリという名称でありながら、私たちの目に留まる羽シロアリは黒、茶、赤と真っ白ではありません。シロアリは地中もしくは木材の中にいる間は真っ白ですが、この姿のままでは紫外線と乾燥に弱く地上には出てこられないため、羽アリになる際に色づくのです。
羽アリになる理由
本来であれば地中や木材に隠れているシロアリは、なぜ羽アリになって地上に飛び出すのでしょうか。
羽アリが群をなして地上に出てくることを「群飛」と呼びますが、これは巣内の個体数が増えすぎてしまったときにその個体数を調整するために行われると言われています。
さらに群飛によって巣から飛び出したシロアリは再び羽を落とし、新たな巣を別の場所に作り繁殖します。羽シロアリを見かけたらすぐに駆除しなければいけないのは、こういった理由からです。
シロアリの種類と特徴
現在日本に生息するシロアリは3種類です。中でも日本全国に分布するヤマトシロアリは、温暖化の影響のためか、以前は見られなかった北海道の南部・中央部にも生息しています。ヤマトシロアリの羽アリは黒く、春先の天気のいい昼間に数千匹単位で群飛するのが特徴です。
本州でよく見られるイエシロアリは関東以南の本州と四国、九州に分布しており、初夏の急激に気温が上昇した日の夜に、多ければ数万匹が群飛します。色は茶、ヤマトシロアリよりも胴が太く大きいのが特徴です。
近年問題となっている外来種のアメリカカンザイシロアリは、関東以南の数県で存在が確認されています。春から秋にかけて、ずん胴の赤黒い羽アリが数十匹、数日に分けて群飛します。
いずれのシロアリも、人の目の前に現れるときには大きな羽を背中に持っているのが特徴です。
被害を受けやすい場所
シロアリは木材であればすべて均等に食べてしまう訳ではありません。食べやすい場所、営巣しやすい場所に集まり、集中的にその部分の木材を食べていきます。
シロアリが心地よく過ごすためには、水分(湿気)、食べ物(木材)、外敵がおらず日の光が届かない環境が必要です。
シロアリにとって繁殖しやすいこれらの条件を満たすのは、住宅の次のような部分です。
お風呂場
シロアリが最も発生しやすいのはお風呂場の周りです。お風呂場の周りは一年中湿気がたまり、水分によって住宅の木材が柔らかくなってシロアリの食害を受けやすい環境となっています。
また、お風呂場を家の端、しかも北側の乾燥しにくい場所に設置しているとより被害を受けやすいでしょう。
キッチン
キッチンも湿気がたまりシロアリが発生しやすい場所です。しかし火を扱ったり電化製品を多く設置するためか、お風呂よりも被害は少ない傾向にあります。
ただし、床下収納などを利用している場合には、そこからシロアリが室内に侵入する恐れがあるので注意しましょう。
トイレ・洗面所
住宅内でスペース的には小さい部分ですが、知らずにシロアリの被害を受けていることがあるのがトイレです。トイレは木材をほとんど使用しないことから、トイレ下でシロアリの被害が進んでいることに気づかず、被害が拡大していたということもあります。
外壁
モルタル外壁のヒビや雨漏り箇所からシロアリが侵入し、被害を受けることがあります。窓の外枠やベランダの接着部分などにヒビがあるときには注意しましょう。
和室
室内において、最もシロアリが発生しやすいのは和室です。木材だけではなく畳なども食害にあいやすく、室内に羽アリを見かけ、畳を返すとシロアリが大量に潜んでいたということも少なくありません。
玄関
シロアリといえば床下からやってくるイメージがありますが、外から最も侵入しやすい場所として玄関が被害にあうこともあります。
特に玄関先に植木鉢を置いて毎日水やりを欠かさない方は、シロアリの被害に十分注意しましょう。
庭
住居内に侵入する前に、庭先でシロアリを見かけることもあります。庭先ではウッドデッキ、庭木、切り株、木材の塀、ラティスなどがシロアリの被害にあいやすくなっています。
対策を行わないとどうなるのか?
このように住宅の内外を問わず様々な場所で活動し人間を困らせるシロアリですが、もし対策をせずに野放しにしておくとどのようなことになるのでしょうか。
庭のシロアリを放置したとき
庭にシロアリを見つけても「住宅内じゃないから大丈夫」と対策を行わない人もいます。しかし住宅とつながるウッドデッキや、地中深く根を張る切り株、外壁に立てかけたラティスなどからシロアリは容易に住宅内に侵入します。
外に食べるものがなくなってしまったら、次は住宅というように移り住んでくる可能性があるのです。
しかし、シロアリを見つけてすぐに対策を行えば被害は最小限に抑えられるでしょう。羽アリとなって群飛している場合には、羽を落としたシロアリが住宅内に営巣する危険があるので十分注意してください。
床下のシロアリを放置したとき
洪水や大雨による床下浸水からシロアリが発生することがあります。基礎をすべてコンクリートで覆ったベタ基礎であれば大丈夫と考える人も多いようですが、ベタ基礎であってもシロアリは内部に侵入できるということを覚えておきましょう。
床下のシロアリを放置すると、柔らかい木材の中をシロアリが突き進み、天井裏まで巣をつくってしまい、将来的に甚大な被害を及ぼすことも少なくありません。
床下から住宅の構造部分にシロアリが侵入すると、住宅全体の耐久性や耐震性が著しく損なわれる恐れもあります。
室内のシロアリを放置したとき
室内で群飛するシロアリを放置してしまうと、和室の畳や内部の木材部分をシロアリが食い荒らし、住宅の快適性が損なわれてしまうでしょう。
シロアリは木材だけを食べるわけではなく、ガラスや陶器のような硬いもの以外はなんでも食べてしまいます。室内から箪笥、箪笥から洋服など、様々なものが被害にあう可能性が出てきます。
放置したままでは畳を張り替えても同じことを繰り返しますし、群飛する季節には強い不快感を覚えます。
また、室内にシロアリがいた時には床下や壁の内側、天井裏にもシロアリがいる可能性が高いでしょう。
外壁のシロアリを放置したとき
外壁のシロアリを放置したときには、将来的に外壁の張替えが必要になるほか、さらに内側に入り込んで柱や室内の木材を食い荒らしてしまうでしょう。
また、シロアリの侵入経路から雨漏りが広がり、住宅の構造体を腐食させてしまう可能性もあります。
シロアリの被害で住宅が倒壊するって本当?
シロアリの被害で住宅が倒壊するという話をよく聞きますが、これは本当なのでしょうか。
確かに、シロアリは住宅の木材を食べてしまいますから、木造住宅はそのほとんどがシロアリの食料と言えます。しかし、シロアリの被害だけで住宅が倒壊することは殆どありません。
それよりも注意したいのが、シロアリによって構造上重要な柱が食べられてしまい、住宅の耐震性が落ちてしまうことです。
もしシロアリの被害を放置したまま地震が起こった場合、最悪住宅が倒壊してしまうこともあるでしょう。
そうならないためにも、シロアリを見つけたらすぐ駆除を行うことをおすすめします。なぜなら、シロアリの被害を長く放置して駆除した場合、住宅の被害状況によっては大規模なリフォームを強いられるからです。
柱の交換、畳、階段、床の張替え、屋根裏・外壁の補修、住宅設備の交換など、多くの費用を要するリフォームが必要になってしまうかもしれません。
費用の相場
マイホームを守るためにも、大金を必要とするリフォームを回避するためにも、シロアリを見つけたらすぐに駆除が鉄則です。
しかしシロアリ駆除と聞くと、まとまったお金が必要というイメージがあります。ここでは、シロアリ駆除の方法とその費用についてご紹介します。
自分でシロアリ駆除をするときの費用と特徴
自分でシロアリ駆除をする場合、薬剤の噴霧器は1,000円から、薬剤は2,000円から1万円ほどで販売されていますから、2~3万円あればシロアリ駆除に必要なものが揃うでしょう。
しかし慣れない床下での作業を強いられる上、現在の被害状況から最適な薬剤を選ぶこともできず、不十分なシロアリ駆除で巣を分散させてしまう可能性が高くなります。
自分で駆除すると安上がり、と単純に考えたことで、シロアリの被害が広がり将来的には大規模なリフォームが必要になってしまうこともあるでしょう。
シロアリや薬剤について知識のない素人が自己判断で駆除を行うのはおすすめできません。
シロアリ駆除業者のシロアリ駆除方法
ではシロアリ専門の駆除業者に駆除を依頼したときにはどの程度の費用が掛かるのでしょうか。
駆除業者によっては、追加料金なしのパック料金体制を取っている業者や、必要最低限の駆除で費用を抑え、さらに必要な部分にだけ処理を施し追加料金を徴収するという業者、1平米あたりの費用を徴収する業者などがあります。
つまりシロアリ駆除を依頼する業者によって料金体系は異なるのですが、優良な業者であればトータルの料金にはさほど差はでないでしょう。但し、シロアリによる被害状況が深刻な場合には、相場以上の駆除費用がかかる可能性があります。
シロアリ業者のシロアリ駆除費用の相場
一般的な住宅面積の場合のシロアリ駆除費用は10万円前後が相場となっています。坪当たりの平均単価で言うと、6,000円~1万円ほどが平均です。
しかし築年数が10年未満、被害状況も小さな場合には5万円未満で済むこともあります。逆に被害が大きい場合には、大きく追加費用を請求されることもあるでしょう。
シロアリ駆除に別途費用が必要なとき
シロアリ駆除だけであれば上記の費用で賄えますが、こんな時には追加費用が発生しますので必ず事前に確認しておきましょう。
- コンクリートへの穴あけ
- 調湿剤や床下換気の設置費用
- リフォームが必要
いずれの追加作業も、シロアリ駆除をすぐにせずに被害が拡大している時に考えられるものです。シロアリを見つけてすぐに駆除を依頼することで、駆除費用を最小限に抑えることができるでしょう。
シロアリ駆除業者の選び方
シロアリの被害を確認し、実際にシロアリ駆除業者に依頼するときに大切なことは、「シロアリ業者の選び方」です。
シロアリ駆除の性質上、シロアリ駆除依頼や見積もり依頼を行うと、必ず「現地確認」が行われます。
この際、業者の床下調査について依頼主自身もその目で状況を確認できればよいのですが、多くの人は床下への調査に同行することはありません。
そのため、依頼主自身が見えない部分であるのをいいことに、必要のない工事を迫ったり、許可なく工事し後でその料金を請求する業者もいます。
また、適当なシロアリ駆除で完全に駆除ができず、逆にシロアリを四方に拡散させてしまっただけということも考えられますので注意しましょう。
確実にシロアリを駆除し、料金も適正なプロのシロアリ業者を選ぶときには、次のような点に注意し業者をよく見極める必要があります。
シロアリ駆除業者を選ぶときの注意点
シロアリ駆除業者の中には、残念ながら上記のような悪質業者と言われる業者も少なからずあります。悪質な業者と優良な業者にはどのような違いがあるのでしょうか?細かく見ていきましょう。
ダメなシロアリ駆除業者の特徴
こんな特徴を持つ業者にはシロアリ駆除を依頼しないようにしましょう。
- シロアリ駆除料金が明確ではない
- 大幅な割引を行う
- 点検後すぐに契約を迫り、契約が終わるまで帰ろうとしない
- 「今すぐ駆除しないと家が倒壊する!」などと言って恐怖心をあおる
- 契約書を交わしていないのにその場で駆除をしようとする
- シロアリ駆除に関係のない商品まですすめてくる
シロアリ駆除の料金体系が不明な業者や基本料金を大幅に値下げする業者の場合、追加請求を多くされてしまうこともあるでしょう。
依頼主の恐怖心をあおったり、すぐに契約を迫る、契約をしていないのに駆除を強行しようとする業者は悪質業者ですので十分注意してください。
優良なシロアリ駆除業者の特徴
では優良なシロアリ業者にはどのような特徴があるのでしょうか?まず確認したいのが、「公益社団法人しろあり対策協会」に加入している業者であるかどうかです。
この公益社団法人では、独自の安全基準や施工基準を設けており、シロアリ駆除技術の共有なども行っていることから、同協会に加入しているシロアリ駆除業者であれば安心して依頼することができるでしょう。
また、優良な業者は床下点検の際にビデオカメラやデジタルカメラを用いて、床下の現況を依頼主にしっかり見せてくれます。
そして床下の状況、必要な工事、最適な駆除方法を説明し、わかりやすく料金を提示してくれるでしょう。
注意したい点としては、「床下の換気扇や調湿剤を勧める業者だから悪質」とは限らないという点です。優良な業者でも、床下の湿気が強い場合にはこれらの工事を勧めます。ただし、優良な業者は無駄に換気扇を多く設置することはありません。
このような悪質業者と優良業者の見分け方をよく覚えておき、シロアリ駆除業者を選ぶ際のポイントとしましょう。
まとめ
折角のマイホーム、長く住み続けたいのであればシロアリ対策・シロアリ駆除は必要不可欠です。欧米に比べて日本の住宅の寿命が短いのは、湿気が多く、シロアリ被害を受けやすいからとも言われています。
しかしシロアリ駆除を急ぐあまり、悪徳業者の手に引っかかってしまったり、安い業者に依頼して追加料金で逆に高くついてしまった、不完全な駆除で被害を広げてしまったということにならないよう注意が必要です。
シロアリ業者を選ぶときには、無理に契約を迫らない、料金体系がわかりやすい、必要な工事や薬剤の説明もしっかりしてくれる優良な業者を選びましょう。
本来であれば地中や木材に隠れているシロアリは、なぜ羽アリになって地上に飛び出すのでしょうか。
羽アリが群をなして地上に出てくることを「群飛」と呼びますが、これは巣内の個体数が増えすぎてしまったときにその個体数を調整するために行われると言われています。
さらに群飛によって巣から飛び出したシロアリは再び羽を落とし、新たな巣を別の場所に作り繁殖します。羽シロアリを見かけたらすぐに駆除しなければいけないのは、こういった理由からです。